人間・山本五十六を描く戦争巨編!「聯合艦隊司令長官 山本五十六」

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 日本映画界が放つ久々の戦争大作である「聯合艦隊司令長官 山本五十六‐太平洋戦争70年目の真実‐」、現在公開中です。
ミリオタ的にも大注目の作品であり、嬉しい事に大ヒットしているとのことでした。


↑劇場パンフ。読み応えあります

 山本五十六といえば、第二次大戦における日本軍最大の英雄です。真珠湾攻撃という空前の大勝利をもたらしながらも、悲劇的な最期を遂げたという生涯も、判官贔屓で悲劇好きの日本人の琴線に触れるものがあり、映画やTVでも度々取り上げられてきました。

 古くは貫録十分な大河内傳次郎の「太平洋の鷲」(1953)から、ザ・英雄!という感じの三船敏郎による「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968)、小林桂樹が実直そうに五十六を演じた「連合艦隊」(1980)、カリスマ性たっぷりだけどキャラの方向性が違う丹波哲郎版五十六が見られる「零戦燃ゆ」(1984)など色々な役者が五十六を演じてきました。

中には、どう見ても違うんじゃないという感じのマコ岩松が出ていたのが日米の五十六観の格差を感じさせた、ハリウッド製の「パールハーバー」(2001)なんてのもありますが。


しかし、今回の役所広司による山本五十六は英雄でも軍神でも無い、人間味溢れる五十六像が描かれていました。海軍の中で孤立しても、あくまでも先の見通しの立たない対米戦に反対し続ける、"海軍の良識"というキャラクターは同じですが、全編を通じて寡黙で物静かという抑えた演技で見せています。
ミッドウェー海戦やガダルカナルの戦いで部下が犠牲になった時にも、将棋を指しながら微妙な表情で内心の葛藤を表現していました。だから、真珠湾攻撃に生還の可能性の薄い特殊潜航艇(甲標的)を参加させる際に、「生還出来ないような作戦は許可出来ん!」と参謀達を一喝するシーンはインパクトが大きいのです。

 それから注目したいのは、この映画では食事によって、キャラクターの心理を雄弁に語るという演出が随所に見られること。出撃前夜に山本家で家族皆がカレイの煮付けを囲むシーン、そしてミッドウェー海戦から敗北して戻った南雲忠一と黙ってお茶漬けを食べるシーン(五十六に「茶漬けは熱いうちが美味いぞ」と声をかけられ、泣きながらお茶漬けをかき込む南雲がグッときます)など、どれも印象的でした。

台詞による説明過多ではないかという最近の邦画の中で、映像によって台詞に頼り過ぎずにキャラに語らせる演出はしんみりと見せるものがあります。

 そして、戦争映画の華である戦闘シーンですが、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、五十六の乗った一式陸攻の撃墜など見せ場も多く、戦争大作らしい風格がありました。戦中の「ハワイ・マレー沖海戦」から戦後のパノラマ戦記まで長い伝統を持つ東宝に比べると、東映は大作戦争映画に参入したのが70年代以降という後発の感もありますが、21世紀になってからは「男たちの大和/YAMATO」(2005)でも気を吐き、新世紀の邦画界の戦争映画をリードしている面もあります。


↑くぉ?じゅらい?♪主題歌も音楽もよかったですなぁ

 これは「男たちの大和」とも共通していましたが、戦闘シーンが全て日本軍の視点で描かれ、米軍兵士は一切登場しません。敵は飛行機や軍艦などの兵器のみ。余り声高に主張しない作風に合わせるかのように、過剰にドラマチックな演出ではない戦闘シーンでした。
と言っても、盛り上がらない訳では無く、特にミッドウェー海戦での米軍の攻撃を受けて炎上する赤城を俯瞰からとらえたカットや、五十六が最期に搭乗する一式陸攻の細かいディテールはやはり大画面で観たい映像です。
ミリオタには、すぐに撃墜されてしまうワンショットライター(防弾が薄くて、被弾するとすぐに燃えるから)として悪評もある一式陸攻がこんなにカッコよく見える映画はそうありません。
陸攻ファン(確実にいます)なら、映画館で観て損は無いでしょう。五十六が座乗している連合艦隊の旗艦が、開戦前後のスマートな戦艦「長門」から、どっしりとした「大和」へと何気に変わっているのもニコっとしちゃうところです。
 細かい事ですが、撃墜された陸攻の墜落をロングショットで捉え、落ちたジャングルから煙が、まるで五十六の昇天を表すように立ち上っていくシーンは静かな感動もありました。


多分、本作は一式陸攻が最も美しく見れる映画として記憶に残るかもしれません

 作品全体としての印象は、五十六や海軍だけではなく、世論を煽る新聞(メディア)や無責任に付和雷同して戦争バブルを期待する庶民たちといった、戦争へ至った日本社会を重層的に描く部分がやや詰め込み過ぎで散漫になった感もありますが丁寧に作られており、かつての日本の戦争映画につきものだった強烈過ぎる悲壮感も殊更強調しない、間口の広い映画に仕上がっています。
事実、私が映画館で観た時には、小学生から高齢者まで実に幅広い年齢の観客がつめかけていました。

 ところで、山本五十六の出身地である新潟県では、TV、ラジオ、新聞などの各メディアが大フィーチャーしており、ほとんど誰もが観なくてはという感じで"県民映画"状態になっています。関連グッズも色々発売されており、五十六カレー、五十六コーヒー、五十六便箋など色々ありますが、カレーを入手したので早速食べてみました。



 何でも、よこすか海軍カレーを更にスパイシーにして、新潟県のご当地食材をプラスしたというカレーです。新潟産のマイタケ(越後牛入りもありましたが、現在売り切れでした)が入っていましたが、野菜の風味とたっぷりスパイスで美味しく食べられます。特に辛いカレー好きがお好きな向きにはおススメでしょう。

 Amazonでも入手可能ですし、製造元のホテルニューオータニ長岡でもネット販売をしています。


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