芸術は怪獣だ!『成田亨 美術/特撮/怪獣/ ウルトラマン創造の原点』へ行く

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明けましておめでとうございます。
お久しぶりです。印度洋一郎です。
今年もよろしくお願いいたします。

さて去年の夏の話になりますが、富山県立近代美術館の
成田亨 美術/特撮/怪獣 ウルトラマン創造の原点へ行ってきました。

今年 2014年1/6からは、福岡で開催されているんですね。

成田亨 美術/特撮/怪獣
narita

ウルトラファンのみならず、映画好きにとっても、大変興味深い展覧会でした。


▼会場の外景

さて、台風が接近して、激しい雨が降りしきる中ですが無事富山に到着です。
駐車場へ車を入れると、おっ!結構停ってますね、こんな天気でも。

この特設展は、富山の地方紙「北日本新聞」創立130周年記念のイベントとして開催されました。

▼イベントのポスター

地元富山だけではなく、私のように隣県から来る者、そして全国から多くのファンが足を運んでいるという、この夏特撮ファンには大注目のイベントでした。
その展示物は実に700点を数え、内200点は初公開というから、これはファンにはマストなイベント。

さて、入口から入ると、いきなり巨大なブランカーの像が!

▼ブランカーの像

ブランカーってわかりますか? 成田亨さんがクリーチャーデザインをした『突撃!ヒューマン』の怪獣ですよ!

『ヒューマン』自体が未見なので写真しか見たことないけど、この像は重厚で凄い!
こんな立派な怪獣だったのか!このブランカーとは記念撮影も出来ました。

さて、展示会場へと入ると、まずは画家・彫刻家としてキャリアをスタートさせた頃の、いわばアーリーワークスが並んでいます。

この中で目を引くのは、「八咫(やた)」という絵画や彫刻の一連の作品。
いわゆる半抽象作品ですが、何というか「ウルトラセブン」に登場する宇宙人の円盤というか、まるでカプセル怪獣のウィンダムが飛行体型に変形したような不思議な形です。
この頃から、後の成田デザインの片鱗が既に現れているのでしょうか。ここには、成田さんが影響を受けた彫刻家ジャコメッティの作品も展示されています。

そして、いよいよ特撮作品のコーナーに入ります。
『ウルトラQ』、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』。
改めて見てみると、成田さんは怪獣だけではなく、科特隊やウルトラ警備隊のメカデザインも担当していたんですね。
現在のようにスタッフが細分化されていなかった時代です。中には青島幸男主演のドラマ『泣いてたまるか』の怪獣ナキラも…

メカといえば、やっぱり『マイティジャック』は外せません。
万能戦艦マイティジャックや搭載機ピブリダー、敵組織Qの巨大メカなどなど、シャープなラインで躍動感がある作品がたっぷり並んでますね。

ここでは、成田さんが影響を受けた20世紀の現代芸術を比較出来るように展示しているのも、興味深いところです。
『セブン』のチブル星人の原画の前に、その意匠とも通ずる抽象彫刻が置かれていて、見比べると「なるほど?」となりました。

続いて、成田さんがより自身のカラーを前面に出した作品とも言える、『突撃!ヒューマン』と『円盤戦争バンキッド』。
『ヒューマン』では、金属を打ち出した独特のデザインが光るヒューマンや、クラッシャー軍団の怪獣メガヘルツやインパルスのエッジの利いた姿には、この作品を残念ながら未見の私は妄想が広がります。

『バンキッド』はリアルタイムで見ていましたが、ブキミ星人達のデザインは先鋭化し過ぎて、最早シュールの領域に突入しています。
作品自体は正直言って、余り印象には残りませんが、この星人達を見るだけでも映像的な価値は大でしょう。
特に鏡に描かれたエイチドバ少佐なんかは、この原画を見ないとその意匠の魅力は伝わらないかもしれません。

尚も進むと、今度は実現しなかった成田さんオリジナルの企画「Uジン」や「マヤラー」のデザインが並びます。
これも実現していたらなぁ、と妄想をかきたてらずにはいられません。
80年代に雑誌「宇宙船」に載っていた、「六つの目の王女とバルタンの末裔」をこのコーナーで見られました。
いやぁ?これ好きな作品なんで、嬉しいなぁ・・・

その次に控えていたのが、オリジナル怪獣のコーナー、有名な「宇輪」や私の一押し「メバ」、「宇宙船」で連載されていた古今東西の怪獣を描く「ナリタ・モンストロ・ヒストリカ」などと共に、今回初公開の圧巻70点にも及ぶオリジナル怪獣の原画!
これは凄い!三方向を成田怪獣に囲まれ、圧倒されてしまい、座り込んでしまいました。

説明文によると、成田さんがアトリエとして倉庫を借りた時に、そこのオーナーが家賃の替りに依頼してきたとのこと。
何だか、ちょっとほろ苦い感じもする、誕生秘話ですね。

この他、映像の仕事の合間にやっていた、純粋な創作活動としての絵画の中にも怪獣が登場しています。
中には、ウルトラマン、ウルトラセブン、そしてヒューマンの三大成田ヒーローがそろい踏みしている像など、いわゆる大人の事情に束縛されない、自由な表現が躍動していました。
70年代以降になると、成田さんにとって、「ヒーロー」や「怪獣」が仕事を超えたライフワークになっていた事が伺えます。

晩年に取り組んでいた、「鬼」のオブジェや巨大な像も展示されていますが、これが大迫力。
異形のものに姿を与える、成田さんの衰えぬ情熱が感じられます。

会場の中央には、特撮を担当した映画『麻雀放浪記』の敗戦直後の焼け野原のミニチュアセットをカメラから覗く、特撮の視点を体験出来る企画もありました。

とうとう出口まで来ました。出口の横に成田さん所蔵のスナップが飾られています。

これは成田さんが参加した映画の撮影中に取った写真ですが、おぉ『ゴジラの逆襲』のセットが!
そして、これは珍しい『潜水艦イ-57降伏せず』のカラー写真(本編はモノクロ映画)です!
その片隅には、草創期の特撮TV作品『まぼろし探偵』の空飛ぶ自動車「まぼろし号」の勇姿も!

成田さんが、日本特撮に貢献したのはデザインだけではなかったことを伝える貴重な資料です。

濃厚な特撮の世界から出てくると、入口のすぐ外の壁に、この展覧会を企画した北日本新聞の関連記事がスクラップされていました。これが必見です!

▼北日本新聞の記事スクラップ

もしかしたら、見落として帰った人もいるかもしれませんが、勿体無い!
日本美術史の中の成田さんの位置づけなど力の入った記事ばかりですが、中でもその生い立ちから晩年までを取材した連載「ウルトラの引力」は必読でした。
晩年、成田さんはご子息にこう言ったことがあるとか。

「お前にはお兄さんがいる。ウルトラマンとセブンだよ」

不覚にもこれを読んでいて、涙が流れました。
周りにはこの展覧会を見に来た子供達が大勢いて、流石に恥ずかしいので眼鏡を拭くふりをして、涙をぬぐいました。

Amazonでも売れ行きが凄いという、この展覧会の図版も兼ねている画集が売店で売っていますが、会場で買うと何とヒューマン・サイン(子供達がヒューマンを呼び出す円盤)が付録でついています!

残念ながら、気づかなかったのですが、館内のカフェでは期間中、怪獣「ウー」をイメージしたケーキや、ガラモンをイメージしたアイスクリームも出ていたのでした。
いや?チェックを怠ってしまったなぁ。

この特集展はこの富山の後、福岡市美術館(2015/1/6〜2/11)、その後は青森県立美術館での開催が予定されています。
今回見逃した方は是非福岡か青森へ!

(関連ページ)
成田亨 美術/特撮/怪獣 ウルトラマン創造の原点 | 企画展 | 富山県立近代美術館

こちらのページでは記事で紹介した作品の画像が見れるチラシがダウンロードできます。

4904702468成田亨作品集
成田 亨 富山県立近代美術館
羽鳥書店 2014-07-30

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