中学生が給食に毒物を混入し、
妊娠した教師を流産させようとした実在の事件に基づく、
ホラーの範疇を超越した衝撃作として内外の映画祭で注目された
『先生を流産させる会』。

先生を流産させる会 [Blu-ray]

▼『先生を流産させる会』予告編 - YouTube

“最凶の教育映画”として劇場公開時にも反響を呼んだ
この長編デビュー作に続く内藤瑛亮監督の新作が、
明日(7/27）“ネクスト・ホラー・プロジェクト”第２弾として登場する。

前作の印象からするとちょっと意外だったのだが、
今回のシリーズ３作中で最もストレートに
正統派ホラーと向き合った感のある『高速ばぁば』だ。

ブレイク前の少女アイドルグループ“ジャージガール”の三人は、
肝試し企画で郊外の廃墟に突撃取材に行くことになる。


だがカメラを手に、最初に一人で建物の奥まで入っていったアヤネは、
そこで高速で移動する得体の知れない影を目撃してしまう。

その日から彼女達の周囲では異様な出来事が続発。


アヤネは顔に出来たささいな傷の悪化を理由にグループを脱退し、
彼女たちのマネージャーやディレクターにも不可解で忌まわしい災厄が降りかかる。

アヤネの傷に責任を感じていたナナミは、
もう一人のメンバー、マイコと迫り来る老婆の影に怯えながら、
恐怖と対峙していくのだが…

設定は前回紹介した第１弾『カルト』に続いて、
アイドルが取材で忌まわしい場所に入ったために、恐怖に憑かれる
パターンだが、こちらは完全なドラマ仕立て。

ただ売れないアイドル少女３人の周辺のうすら寒い日常描写は妙にリアルに迫ってくるし、
彼女たちが表向きは仲良く振舞いつつも、
その裏で時折垣間見えるドロドロしたライバル意識や憎しみをも描いていくことで、
彼女たちの関係を浮き彫りにさせていくあたりは、
やはり『先生〜』と共通する内藤監督の持ち味が感じられる。

怪異の原因に最近話題のブラック問題を持ってくるあたりも同様だろう。
（ちなみに脚本も内藤自身が手がけている）

ただ本作でのそうした部分は、
『先生〜』の時に比べると物語の構成要素的な扱いに留まっており、
作品の本質はあくまでストレートなＪホラー。

怪異それ自体を描くことに主眼がおかれている。

例えば怪異により、

顔の傷が膿み、
髪が抜け、
傷口ははれ上がり、
そのかさぶたが掻きむしられ…

といった、肉体変容描写の生理的嫌悪感はかなり強烈だし、
廃墟の中で蠢く影や心霊映像などの
王道描写もなかなか堂に入っている。

そして、タイトル・ロールにもなっている
老婆の悪霊“高速ばぁば”の存在感も秀逸。

最初にタイトルを聞いたときには、
笑えないコミカル・ホラーになっているんじゃないか？
と危惧したのだが…

実際に高齢の女優さんが突っ走り、跳ねて演じていることで、
肉体的インパクトで観る者に迫る、
ちょっとこれまでの心霊ホラーでは
例の無かったホラー・キャラの創造に成功している。

出演は、ジャージー・ガールの３人に、
未来穂香、北山詩織、後藤郁という３人の若手が扮しており、
正直ボクはあまり馴染みのない顔ぶれだったのが、それが逆に作品のキャラにあっている。

またマネージャー役で『血を吸う宇宙』（01）等の中村愛美、
ディレクター役で『木更津キャッツアイ』の岡田義徳らが脇を固め、
中村有志も事件のキーとしてチラっと顔を見せている。

なお先行して発売されていた、内藤の脚本に基づく
本作のノベライズ『高速ばぁば』 (TO文庫)は、
以前こちらで紹介した『心霊病棟　ささやく死体』（11）の福谷修監督によるもの。

高速ばぁば (TO文庫) 福谷修 内藤瑛亮 ティー・オーエンタテインメント 2013-06-01 by G-Tools

▼芳賀優里亜主演『心霊病棟 ささやく死体』は”日米病院ホラー対決”日本代表だ！ - 映画宝庫Ｖ３

ボクは未だ読めてないが、
作家としても多くの作品を発表している福谷だけに、
こちらも単なるノベライズには終わっていない予感。

映画にあわせて読めば、ノベライズだけのサムシングが見つかるかも。

（補足）
福谷氏ご自身も、26日更新のblogでノベライズに触れていましたのであわせてどうぞ。
やはり一筋縄では終わらせていないようです…

▼ニコ生で『心霊写真部』再放映&『高速ばぁば』公開！｜心霊写真部 福谷修

▼映画「高速ばぁば」予告編 - YouTube

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『高速ばぁば』

2012年／日本／71min
配給：トラヴィス
2013年７月27日（土）よりユーロスペースにて１週間限定レイト・ロードショー！
（C）2012 Next Media Animation Limited. All rights reserved.

▼映画「高速ばぁば」公式サイト

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