予告編だけでも萌えな東宝映画「はつ恋」

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武「やはり、というかこれしかないでしょう、今日のメニューは」

拝「そうでしょう。じゃ、乾杯」

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テーブルに上には、カルピスサワーが二つ。
拝編集長は、美味しそうにグッと飲み干した。

武「今日の映画は『はつ恋』です。だからですよね、カルピスは…」

拝「そう。?ママの味?だから」

武「それは?ミルキー?です。?初恋の味?でしょ」

拝「こんなのもあるのだ。はい、ピュレグミ」
と、編集長。なにやら取り出してきた。

武「グミ…ですか?」

拝「そう、ピュレグミは?恋の味?なのだ。PerfumeがCMでやってたでしょ」
…今日取り上げるのが、いつもとは違うアイドル映画のせいか、見た事の無いメニューがどんどん出て来るな…
気にしても仕方ないので、とりあえず先に進もう。

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『はつ恋』は、1975年11月に公開された、東宝映画製作配給の青春映画である。

高校生の一彦(井上純一)は、母と共に鎌倉にある邸宅で受験勉強に取り組んでいた。
ある日、隣の家に画家の未亡人と、娘るお(仁科明子)が引っ越してくる。
るおは気位が高く、奔放で、いつも取り巻きに囲まれて女王のごとく振舞っていた。
そんなるおに、一彦は海辺で偶然出会い、彼女の魅力に取りつかれてしまう。
二人は度々逢うようになるが、るおは時々ひどく冷淡になった。そんな気まぐれに、一彦の心は揺れ、恋人がいるのではないかと直感する…。


夏の別荘地で、少年が恋した年上の女性が、実は父親の愛人だったというツルゲーネフの小説「初恋」を、現代の鎌倉を舞台に置き換えて翻案した作品。未だに根強いファンのいる作品である。

ヨーロッパ映画のように、細かい心情を丹念に描き込んだ脚本は、さすが後に『泥の河』(82)を書く女性脚本家、重森孝子である。
当時、東宝による一般公募で、最も映画化して欲しい外国文学に選ばれた作品という事で製作されたものだった。

監督は小谷承靖
アクションからコメディまで幅広いジャンルを撮っている監督だが、
ここの読者には『極底探検隊ポーラボーラ』(77)『バミューダの謎』(78)『武士道ブレード』(81)など、トム・小谷名義で監督した作品がお馴染だろう。
小谷監督は70年代、フォーリーブス主演『急げ!若者TOMORROW NEVER WAITS』(74)、や『ピンク・レディの活動第写真』(78)のほか、
『愛の嵐の中で』(78)では桜田淳子
『ホワイト・ラブ WHITE LOVE』(79)では山口百恵と、
当時旬のアイドル映画を次々と手掛けていった。
けれども、どの作品も、アイドルを出演させるだけの見世的な企画には終わらずに、何かしら物語にきっちりと主張を持たせているのが特徴だ。

思春期の揺れ動く少年を演じた井上純一は、この当時アイドルとして売り出し中で、この後にTV『青春ド真ん中!』(78)や『ゆうひが丘の総理大臣』(78)の生徒役で人気となる。
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また、年下の一彦を翻弄するヒロインを演じた仁科明子(現・亜希子)は、当時「お嫁にしたい女優」の常連だったほど人気があった。この作品では、それまでの清純なお嬢様というイメージを払しょくする大胆な演技を見せている。
残念ながら70年代終盤に、松方弘樹と結婚して芸能活動を一時休止してしまうけれども、仁科明子が最も輝いていた作品の一本と言っても良い作品だ。
また、海に近い鎌倉のロケが効果的に使われているのも特徴。変化に富んだ地形をうまく取り入れた、映像の解放感が素晴らしい。洋館から見える海など、名手>中井朝一の撮影で見事な効果を上げている。

拝「あの"ダバダバダ♪"のスゥイグル・シンガーズをBGMに使うのって、新鮮だね」

武「いかにも?青春映画?しかもヨーロッパ風、という感じでした」

拝「この映画は、何と言ってもヒロインの仁科明子さんでしょ」

武「多分、拝編集長の事だから、仁科さんの…あの登場シーンですか?」

拝「うん、もちろん、それもあるけれど、自分的には葉っぱを挟んだ長いキスシーン。今見てもドキドキするね」

武「その時の薄暗い映像が、とても綺麗なんですよ。
それに、次のシーンで、その葉っぱを栞にして、スタンダールの「恋愛論」を井上純一が読むんです。甘酸っぱい青春映画です」

拝「”はつ恋”ってーと最近だと木村佳乃主演でNHKで放送してたのが、おばさんにアホみたいに評価されてたよね。うちも観てたけど」

武「同じ話ですか?」

拝「全然関係ない。悲恋な終わりが一緒。でも女性が夢見る理想の不倫(?)話だよね。俺も高校の頃さ、こういう仁科さんみたいのが近所にいたらさ、人生変わってたんだと思うんだよ。それがさ…」

武「すいません。そろそろ…」

拝「あ、じゃあ、そろそろ岸田森的視点、ド?ンと行ってみようか」

岸田森は、るお(仁科明子)の取り巻きの一人、画商の木村を演じている。
和服で過ごし、いつもいる四人の取り巻きの中でもリーダー的な存在、率先して馬鹿な事をする。この馬鹿な事を無邪気にやる、というのが取り巻きのルールなのである。
だが、実は一番物事を見とおしていて、一彦(井上純一)に的確なアドバイスを与える。るおの事がすべて判っていて、わざと馬鹿な事を続けている、というインテリなキャラクターだった。

何か所か登場シーンがあるが、そこではいつも馬鹿な事をしている。

・瓶ビールをるおと廻し飲み。最後に岸田森は、るおから頭にビールをかけられて大はしゃぎ。
・防波堤で、るおがフラメンコを踊るのに合わせて、楽しそうにエア演奏。
・一彦(井上純一)の入団試験は、葉っぱを一枚間に入れて、るおと10秒間キスするという、まるで学生みたいなノリ。岸田森たち取り巻きは、それを外から見ながら嫉妬してヤジを飛ばす。この時、岸田森が二人のキスを良く見ようと、わざわざメガネを拭く芝居をするところが細かかった。

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などである。
岸田森の役は、かなり現実感がないキャラクターである。
登場シーンは、その場でノッてアドリブで作りあげたような不思議なシーンばかり。けれども、映画の性質上、この役作りは全く不自然ではなく、全体に、ヌーベルバーグ的な雰囲気を漂わせる事になる。

拝「かなり自由な感じだったね、岸田森さん」

武「脚本に書かれていた事を、どんどん拡大解釈して演じたのかもしれません」

拝「やりたい放題だけど、全然違和感がないね」

武「変わった役でした。岸田森さんファンは、是非ご覧ください」

拝「で、次は何か考えている?」

武「同じ小谷監督の『愛の嵐の中で』(78)はいかがでしょうか?」

拝「主役は…桜田淳子ちゃんだ」

武「一転して、物凄い役作りなんです、この映画での岸田森さん」

拝「それ楽しみにしているね。じゃあ、次回もこの居酒屋で」

武「はい」


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