特撮のないSF…『ブルークリスマス』

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拝「ジングルベ〜ル、ジングルベ〜ル♪」

武井「ご機嫌ですね、拝さん」

拝「年の瀬だし、映画宝庫V3もなんとか軌道にのったし!メリークリスマス!
と、編集長はご機嫌だ。
でも、その華やかさの割に、テーブルにはかなり地味な料理が載っている。

武「これ、イカソーメンですか」

「そう。すみイカの近海もの。今が旬だから。
すみイカって言っても、まっ黒なわけじゃないよ」

武「多分、スミを吐くからじゃないでしょうか…ってマジメに解説する事もないですよね。で、何でイカですか?
今日取り上げる映画『ブルークリスマス』とあまり関係ないようですが…」

拝「さてどうしてでしょうか?」

武「もしかしてと思いますが、イカの血液が青いからですか?映画の中でも言っていましたが」

拝「当たり! イカの血液の…(棒読み)呼吸色素がヘモシアニンで、酸素と結び付くと銅イオン由来の青色になる…のだ!」

武「続きはWikipediaで」

拝「さっさと本題に入るのだ」


ブルークリスマスは、1978年11月に東宝で製作したSF作品。

この年2月には『未知との遭遇』、6月には『スターウォーズ』が日本公開され大ヒットを記録、SFブームが巻き起こっていた。
その流れに乗って、東宝で製作されたものだ。

世界各地でUFO目撃事件が頻発する。
そんな頃、城北大学教授の兵藤博士(岡田英次)は、突然予定にない宇宙人の存在を講演して注目を集めるが、その直後失踪する。

国営放送JBCの南(仲代達矢)は、その事件を追いニューヨークへ飛ぶ。
そこで出会った兵藤博士から、UFOを目撃した者は、血が青くなるという衝撃的な事実を知る。
だが、その直後兵藤博士は拉致され、事件はうやむやになってしまう。

政府は、青い血の人間を抹殺しようとする謀略を秘密裏に進めており、国民の反対を押し切って全国民の血液検査を実施。
青い血の人々を次々とシベリアの強制収容所へと送っていた。
そして、ついにクリスマスイブの夜、政府は青い血の人間たちが武装蜂起をするという話をでっち上げ、世界各地で大量虐殺をおこなう…

この当時は、『スターウォーズ』などが巻き起こした、SFXを派手に使用したSF映画がブームだった。
だが、この作品はSF映画といいながら、特撮を一切使わないという事を謳っていたので、当時SFというジャンルに目覚めたファンたちには、派手さがなく異様な作品と見えた事もまた事実で、実際あまりヒットはしなかった。

ただし、これは売り方の問題であって、監督岡本喜八、脚本倉本聰という組み合わせからわかる通り、内容は、人間ドラマと国家的規模の謀略の非情さを中心に、丹念に描き込まれており、良質のドラマとして成功している作品である。

そのために、三十年以上たった現在でも、しっかり観賞に耐えられる見事な映画に仕上がっているのだ。
また、この当時は角川映画の参入で、映画の大作化が進んでいた。
『ブルークリスマス』も、パリとニューヨークにかなりの分量のロケ撮影を行っている。だが、実際には予算的が厳しく、この海外シーンは、正味たった六日間、スタッフ九人だけで、200近いカットを撮影したというから驚きだ。
しかも、劇場用の35ミリフィルムではなく、ワンランク落した16ミリフィルムで撮影して、後に35ミリにブローアップというタイトなロケだった。

全体に、いつもの岡本喜八監督作品よりもカット割りが細かい印象を受けるが、これは自らが書いた脚本ではなかった事が大きい。しかも脚本家倉本聰からの要望で、セリフを変えることが出来なかった。そのためもあるのか、後半、勝野洋と、竹下景子のロマンスが描かれているシーンは、幻想的な長いカットが多く、これも普段の岡本喜八作品ではあまり見られない新鮮なものだ。

デビュー以来、東宝映画の監督として活躍していた岡本喜八監督だが、この作品が事実上古巣東宝での、最後の製作作品となった。


↑佐藤勝作曲のエンドタイトル

拝「公開当時、確かUFOもブームじゃなかったっけ」

武「木曜スペシャルなんかで、矢追純一さんがUFO特集、さかんにやっていた記憶があります」

拝「ピンクレディーの『UFO』も「日清焼そばUFO」もこの頃だ」

武「「日清焼そばUFO」は1976年、ピンクレディは1977年、です。あ、居酒屋狭いから『UFO』踊らないで下さい」

拝「まさか…恥ずかしいよ」

武「すいません。拝さん腕を組んでいたもので、もしかしてと思って…」

拝「……特撮使わないって、SFブームの中では異色作でしょう」

武「当時の観客は、どうとらえて良いのか戸惑っていたと思います。でも、映画自体は、凄く出来が良いです」

拝「あ、でもワンカット、UFOらしい光が写っているシーン、あるんだよね」

武「ジェット機の操縦席から見たシーン。ほんの一瞬ですけれども」

拝「生活感ただよっているよね。ラーメン屋とか、商店街とか…派手なSFが大挙して公開された当時としては、かなり珍しい」

武「人間ドラマ中心だからだと思います。岡本喜八監督もパンフレットで、そういうごく身近な人間をちゃんと描く事で、宇宙的な広がりが出せれば、と書いていました」

拝「なるほどね。
じゃあ、そろそろいつもの?岸田森的視点?ド?ンとよろしくね」

岸田森の役は、代議士の側近役
青い血を持つ母子の分娩をした東京順天堂病院に代議士風の男(天本英世)と共に現れる。
応対に出た院長(神山繁)に、
「母子ともに今夜中に処理して下さい」と
さも当然のように指示をする。ためらっている院長に向って立て続けに
「処理だ。よろしくお願いする」とだけ言って立ち去ってしまう。
黙ったままの天本英世と、淡々と指示を出す岸田森、短いながらも二人の役者の共演は、印象に残る。

拝「…ん?これだけ?」

武井「はい」

拝「短いね…」

武「登場シーンもセリフも、これしかないので、他に書きようがなくて…」

拝「実は、始めて見た時、天本英世と岸田森の方が宇宙人かと思っちゃったんだ」


↑公開当時のシングル盤。歌はChar。このメロディを聞いただけでじわっときます

武「…そう言われれば、確かに…狙ったキャスティング?
と、そこに店員が追加料理を運んで来てくれた。

武「ロブスター、あさりバター、たこの刺身…ですか」

拝「こいつらの血液も…(棒読み)呼吸色素がヘモシアニン…」

武「良くわかりました」

拝「Blood Type:Blueなのだ」

武「エヴァンゲリオンのシトですか…なんとなく食欲がわかないな…」

拝「ヨーロッパでは青い血に「貴族の血」って意味もあるんだ」

武「本当ですか?」

拝「もちろん!…(棒読み)スペイン語sangre azul、青い血、貴族の血という意味。貴族は褐色の肌ではなく色白だから、静脈が良く見えた…のだ!」

武「続きはWikipediaで」

拝「さっさと次回予告するのだ」

武「岸田森さんと岡本喜八監督の出会いの作品『斬る』を考えています」

拝「山本周五郎原作だね」

武「岸田森さんは、討伐隊の隊長で格好良いんです。岡本喜八監督作品の中では一番です」
拝「そこの所、うまく書いておいてね」

武「じゃあ、吸血鬼とアイドルが出てくる邦画を見ますので、先に帰ります。殿井さんのお勧めなんです」

拝「面白いらしいよ、それ。じゃあ次回もまたこの居酒屋で」


↑青い血の粛清事件…全てはココから始まった…わけがない


【予告篇】ブルークリスマス 投稿者 Rui_555


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